尾道ぶらぶら記③「紙辺」「ローファイおばあちゃん(Sigríður Níelsdóttir)」

朝ネコノテパン工房へパンを買いに行く。

今年は、妻を連れ立っての尾道である。
いずれは尾道にも住処をなしたいと企てている為、今回は
妻に尾道の良さをプレゼンしないといけないのだが
ここのパン屋さんとその坂道から見える瀬戸内海を
見ていただければそれ以上の説明はいらないだろうと思ったので
てっとり早いので朝オープン前から連れて行った。

坂を下りてくると、あなごのねどこに「紙辺」というつつましい看板があって
なんじゃこりゃ、と吸い寄せられていくと先年ここに寄宿した時には
にはなかった古書とCDの店が奥の奥にできていた。

ここで「ローファイおばあちゃん」というの気になる
アルバムを聞かせてもらったら本当にローファイで、とてもよかった。
シグリズル・ニールスドッティル(Sigríður Níelsdóttir)というアイスランドの女性だ。

(後になって調べてみるとCASIOトーンを使っているらしい。
レゲエの名リディムたちを上げるまでもなく、やはりカシオトーンはなんかいい。
どこか知らない世界の空で編み物を作るかのようにおばあちゃんが
カシオトーンとMTRの前に座っているかと思うと、
なんか「よおし私も。」とやる気が出る。)

よかったので、「ください」といったら、白いシャツを緩く羽織った店長が

「いま店の紙袋を切らしているので」

といって無地の紙袋にドローイングペンのようなものでさらさらと文字と絵を
かいてくれた。これがよく見ると、児島功のような線に迷いがない美女で
余白の取り具合もばっちり決まっててなんだかとても嘆息してしまった。

何気なくこういうことができる人は、
きまってていいなあと思う。

押しつけがないのに時間の厚みを感じとれる町なのだなあと
ぐっと来て、あなごの寝床のトンネルを抜け出てくる。
気が付いたら妻は紙辺でグレングールドの本を買っていた。

gnkosaiBANDとのリハーサルが始まるので
妻をまたたびに預けてアーケードを物色しながらはらいそへと向かう。