関東鉄道常総線玉村駅のトマソンについて(つくばのおもいで)



「過去の男のことしか曲にできないの」

という女性シンガーのことを知っているが
その気持ちはよくわかる。

一旦自分のお腹のそこに貯めておくという
作業が必要になる種類の作り手もいるのだろう。

京都に引っ越したので
つくばのこともぼちぼち話していければと思うが
何よりも特筆しておきたいのは

関東鉄道常総線の玉村駅にある
トマソンのことだ。

無人駅とトマソンが好きだ。
トマソンはとは何ぞや?とか、
なぜ無人駅とトマソンが好きなのかということは
語りだすときりがない上に語りすぎると
大事な本質が指から滑り落ちそうなので
まだうまくいえないが

「人の残滓を感じるのが好き」

とか、そういうことかもしれない。

さて玉村駅のトマソン。
玉村駅は厳密にはつくばではなく常総市にあるが
せっかく近所にいるので、と自動車に乗って
無人駅巡りをしていたときに出会った駅だ

煙草を吸う時は無人駅で佇んでタバコを吸うし
煙草を吸わない時はあんぱんと牛乳を買ってきて
駅のホームや入り口でぼんやり食べるのが
この上なく好きだ。

食べおわるまでの間は
この町に住んだらどんな暮らしをする
のだろうというようなことを想像している。



水海道から下妻へと縦に伸びる
関東鉄道常総線はたくさんの
佇みがいのある魅力的な無人駅があったが
何より玉村駅だ。

玉村駅にはトマソンが併設されている。
「純粋階段」という種類のトマソンだ
今は階段として登ったり降りたりする
意味や機能がなくなった階段のことを
路上観察家の赤瀬川原平がそう名前をつけた

トマソンの横で一緒に並んでたっていると
意味がなくてもそこに存在している
ということに、なんかよかったなあと
思わず自分も許されたような
気になってしまうのである。


純粋階段は本来の用途を失っても
腰掛けたり座ったりできる所は
切り株にも似ているなあと思う。