徒花と水茎/white and black

 筑波山も生暖かい日曜日である。九州のほうでは春一番が吹いたという。生来、夏が好きなあまり冬は苦手なので冬は短い方が良い。かといって全くないと困る。見慣れない景色を見せてくれるので積雪も好きだ。冬は1年の香辛料のように強烈なのが少しだけあるといい。いつまでもだらだらと居座る冬というのが最も苦手で、夏は早く過ぎ去るのに、とはるさきの冷え込みとかには憤りさえもおぼえる。

 小林大吾から音源のミックス依頼が届いた。詩人、小林大吾の事は説明するまでもないと思うが今やフラインスピンレコーズの看板アーティスト。自作のトラックに自作の詩を読むメガネの男である。「無二」という言葉がよく似合うが本人はどうもそれを望んでいない所がある。新宿スポークンワーズスラム(SSWS)であってからの仲で、彼のアルバムのミックスを担当させていただいている。

 お互いの気が向いたらメールで中学生のような雑言を浴びせ合うやり取りをしたり、彼の住まいの近所の90年代R&Bばかりがかかる中華料理店でたくさん餃子を食べたり、冬がやってくるとなぜかクリスマス前後に男2人で旅行に行く、というような無益な事をこのところ、くり返している。(「無益」と書いたが外側に意味の無いことこそ、内側で意義があると、トマソンの佇まいを見た時の感動を例に出すまでもなく彼は知っていて、言わずもがな、なところがいい。)

 アルバムを作り始めたのか?とおもったらYOUTUBEに音源をアップするということであった。そういうと彼の音源をミックスするのはなぜか冬が多い。上野毛、川崎、駒沢、高尾と自身の転居先の小部屋にはるばる、古川耕プロデユーサーとレーベル主の山路、そして小林大吾が集まってアーダcoda作業を行っていた。缶コーヒーを良くのんだ。

 最初の頃はいろいろ試したが、彼の4つめのアルバム「小数点花手鑑」になる頃には確固とした音の世界というのを彼が手にしていて、そこが揺るぎない、ということを他者と確認する作業のようなものになっていた。つまりやることはあまりない。今回も説明せずに3つのミックスを提示したが、小数点花手鑑に近いミックスを良し、と返答してきた。


あいかわらずフフッとなる彼の言葉である。
時に無益なフィクションがもしかしたら、
世界のあれってそうなのかもとハッとさせられる。





しかたがないので、お返事を書いた。
さっきの手紙のご用事なあに。





小林大吾のが制作するものはアートワークからジャムの瓶までセンスが行き届いている。
トラックも然り、ときどき同業としていやんなる程。
トラックのバランスやミックスが微妙に違うのでそちらも併せて楽しんでいただければ。

小林大吾視点(ブログ)、今日バレンタインじゃないか!
http://diagostini.blogspot.jp/2016/02/white-and-black.html