利尻島と「眉クラブ」についての備忘録

シャツとジャケットがあれば
たいていどこでも忍び込める。
というのはNYにいるころに学んだが
これが功を奏してのちのち
NASAやJAXAにもうまく忍び込むことができた。
おそらく現代に忍者がいるとしたら
あの黒装束ではなく黒ジャケットとシャツを
着ているのでなかろうか

しかしあらぬ誤解を招くこともあって、
これくらいの季節だったか、
以前北海道放浪のとき、いつもの黒ジャケットに
シャツでスーツケースをごろごろ転がして
利尻島を登りに行ったら
自殺しに来たのと勘違いされたのだろうか、
ひどく優しく対応していただいたことがある。

利尻島には「眉クラブ」という謎の食堂があって
そこはご飯を食べるとなぜか宿泊していけるという
ことになっている。
マスターの飄々とした生ぬるいそよ風のような
(褒め言葉である)雰囲気は
めったにあったことのないタイプの人で
ちょっとショックを受けた。
まだあるんだろうか眉クラブ。

無事利尻山頂を踏み、フェリーに乗って利尻を発つ朝
マスターはフェリー乗り場まで見送りに来てくれた。
しかしなかなかフェリーが出発しないので
ずっと甲板と港からお互いを見つめあう構図になって
妙な雰囲気になった。

マスターの眼の奥はどこか寂しそうであるが
案外何も考えてないようにも思わせる。
めったにあったことのないタイプの人で
ちょっとショックを受けた。