叡山電車とカーティス・メイフィールド

出町柳駅始発八瀬比叡山口駅行きの電車は
夜深くなると人もまばらで
終点に近づく頃にはほぼ人がいなくなる

たまに近所の高級な宿泊施設へ向かう旅の人たちが
うれしそうにカートを引っ張って降りていく週末以外は
おりる人は片手で数えるくらいしかいない

カーティス・メイフィールドのライブ版を良く聴いている
カーペンターズの『Weve only just began』から
インプレッションズの『People get ready』に
MC無しで演奏が移るくだりが好きで、そこばかりをきいている

『People〜 』の方は歌いだしが「電車がやってくるよ…」といった内容で
それが、自分が乗っている電車にすこぶる会う

マービン・ゲイやダニー・ハザウェイ、スティービー・ワンダーと比べて
この人は地味だな、と思っていた
グルーヴとかもみんなで一体になってノリを作るとかではなく
それぞれが訥々と、こぼれそうになりながら手をつないでいる
そういう空気が良くて何度もきいてしまう

はたしてこのライブが再現されるとして
そこへ見に行きたいかというと
もちろん見に行きたいけれども
別に見に行かなくてもいいやとも思ってしまう

この人達はどんな人達なのだろうとか
どんな灯りがともっていたのだろうとか
演奏のとき、みんなでどんな景色を思い浮かべていたのだろうとか
電車のクッションで揺られながら
あれこれおもっているのが好きなのだ

ぽろぽろっと出町柳の乗り場に人が集まってきて
ぽろぽろっとめいめいの家路でおりていく
そういうのを眺めながらそういう音楽を聴いていると
だれかの夢で電車に乗っているような気分になる